はじめに
2022年4月放送のテレビアニメ『サマータイムレンダ』、2026年に初めて観たのですが、めちゃくちゃ面白かったです!
面白すぎて、観てすぐに友人たちに「サマータイムレンダ観たことある?面白くない?」と聞くと、全員が「観た」「面白すぎて2回観た」などと絶賛する作品。
特に第一期では、サスペンスと土着信仰要素が混ざり合っていて、島の謎が少しずつ紐解かれていく恐さとワクワク感を楽しめます!
余談ですが、アニメ第一話を観たときから、『ひぐらしのなく頃に』とそっくりだなと思いました。
↓似ている要素
- ループもの
- 土着信仰
- 悲劇的な展開
- オープニング主題歌が亜咲花(14話〜)
作者の田中先生は、好きなホラーゲームなどに影響を受けたとのことなので、もしかしたらひぐらしもお好きなのかもしれません!
ところで、サマータイムレンダの謎を一身に担うヒルコには、実は元ネタがあることを知っていましたか?
元ネタを知ることで、サマータイムレンダをより楽しめること間違いなしです。
それでは、早速見ていきましょう。
日本神話のヒルコとは?
ヒルコ(水蛭子)は、日本最古の書物である『古事記』や『日本書紀』に登場する神様です。
しかもイザナミとイザナギが、天照大神よりも前に産んだ唯一の「神」なんです。
古事記の時系列としては下記です。
- 矛で淤能碁呂島(おのごろしま)を創る
- 水姪子(ひるこ)を生む ※子の数には入れなかった
- 淡島を生む ※子の数には入れなかった
- 淡路島と四国を始めとする島々を生む(国生み)
- 天照大神などの神々を生む
しかし水姪子(ひるこ)は不具の子だったので、不吉として、葦の船に乗せて流されました。
そのため、正式な子どもとしてはカウントされていません。
『古事記』ではイザナギ、イザナミの言葉として「わが生める子良くあらず」とあるのみで、どういった子であったかは不明です。
後世の解釈では、水蛭子とあることから水蛭のように手足が異形であったのではないかと言われています。
『日本書紀』では「蛭児」と表記されます。
三歳になっても脚が立たなかったため、天磐櫲樟船(堅固なクスノキで作った船)に乗せて流されました。
ヒルコ様は古事記の中でも謎が多く、ひときわ不気味な存在のため、物語の題材にぴったりだと思っていました。
なのにアニメを観てヒルコが登場したときは、テンション爆上がりでした!
神話でヒルコが流れ着いた場所はどこ?
ヒルコが流れ着いた場所があるなら、それはどこなのでしょうか?
まず、ヒルコが生まれた後にできた島には、時系列的に流れ着きようがありませんよね。
よって国生みでできた下記の島は、候補から除外します。
- 淡路島
- 四国
- 隠岐島
- 九州
- 壱岐島
- 対馬
- 佐渡島
- 吉備児島(岡山県にある児島半島)
- 小豆島
- 周防大島
- 姫島
- 五島列島
- 男女群島
また淤能碁呂島は、イザナミとイザナギが作って降り立った島なので、除外します。
なので、候補としては下記です。
- 北海道〜東海地方
- 近畿地方
- 中国地方
結構範囲が広いのですが、国生みで生まれた島の位置から、「近畿地方」「中国地方」あたりが候補になってきそうです。
神話では、ヒルコと同じく不完全な子として、子どもにカウントされていない島が一つだけあります。
それが淡島です。
古事記では、ヒルコは淡島より前に生まれているため、時系列的にヒルコが淡島に流れ着くことはないものの、ヒルコと淡島には「不完全な子」という無二の共通点があります。
実は淡島の場所は、和歌山市加太の友ヶ島を構成する島の一つである淡島(神島)とされています。
また友ヶ島は、サマータイムレンダの舞台である日都ヶ島のモデルと言われています。
淡島とヒルコが揃ってしまったサマータイムレンダの世界線は、あのような大きな事件が起こるのも必然な、最凶タッグなのかもしれません。
サマータイムレンダのヒルコとは?
この項目はネタバレを含みますので、ご注意ください!
サマータイムレンダに登場するヒルコとは
ヒルコ様とは、島の北部に建つ日都神社の愛称です。
- 「影の病」という風土病がある
- 影の病になった人は日都神社でお祓いしてもらう
→実際は影と日都神社は敵関係ではなく、むしろ日都神社に行くと影に差し出されるという、影がコピー元の人間を効率的に探せる慣習になっています。
日都ヶ島に伝わるヒルコ伝承
- 1732年享保の大飢饉のとき、万年青浜に巨大な鯨が流れ着いた。
- 鯨がとある娘(波稲)そっくりの姿になり、娘を取り込んだ。
- 人々はその娘を現人神ヒルコ様として祀った。
南方ひづるの考察
- 海の中の生命体をコピーし続けた結果、クジラになり、日都ヶ島に流れ着いた
- 地球以外のどこかからやってきた生命体が、隕石などの形となって、地球の海に落ちた。
漂着神信仰(寄り神信仰)とは?
日都ヶ島では、「海から流れ着いたものに神が宿る」という漂着神信仰がありました。
古代の人々にとって、海は常世の国との境界線でした。
常世の国は理想郷であり、神々が住む場所と考えられており、そこから来るものはすべて幸をもたらすと信じられていました。
例えばクジラや大きな魚は「寄神(よりがみ)」や「えびす」と呼ばれ、漁村に莫大な富をもたらすとされました。
特に友ヶ島を含む和歌山県や兵庫県では、漂着神信仰が色濃い地域です。
もし日都ヶ島に何かが流れ着いたなら、それはヒルコとして信仰されるのも自然と言えます。
なぜ最終話で、日都神社の御祭神がヒルコから天照大御神に変わったのか?
実はヒルコは、もとは太陽の神だったという説があります。
『日本書紀』に出てくる、天照大御神の別名の大日孁貴(おおひるめのむち)の『ヒルメ』に対応するのが、『ヒルコ』であるという説です。
ヒルメ(日女)とヒルコ(日子)という太陽神と捉え、イザナミとイザナギのような対となる存在ということで、ヒルコは太陽の男神と考えられています。
『南総里見八犬伝』の著者である滝沢馬琴は、ヒルコは日子である上で、ヒルコは星であり、北極星のことであると説きました。
実際に友ヶ島には天照神社がありますし、信仰の対象がヒルコから変わるのであれば、天照大神になる可能性が高いでしょう。
おまけ(ヒルコを主祭神とする神社)
西宮神社(兵庫県西宮市)
全国のえびす信仰の源流です。
蛭児大神を主祭神とする神社です。
海に流されたヒルコが西宮の海岸に漂着し、地元の漁師が拾い上げて祀ったのが始まりとされています。
おまけ(ヒルコと同一視される神)
エビスは、日本神話には出てこない神です。
しかしヒルコが海に流されたエピソードから、海からやってくる神としてエビスと同一視されました。
具体的に、書物に登場するエビスを見ていきましょう。
平安末期にエビスは市場の神として現れます。
鎌倉時代には『平家物語』の異本である『源平盛衰記』では、海に流されたヒルコは摂津(大阪府北西部~兵庫県南東部)に漂着して、夷三郎殿(エビス)として西宮神社に鎮座したとされています。
南北朝時代の『神皇正統記』では、以下のように書かれています。
蛭児とは西宮の大明神、夷三郎殿是なり。此御神は海を領し給ふ。
もう一つの有力な説として、エビスの正体は事代主神であるという説もあります。
理由は、事代主が記紀で釣りをしていたとされること、エビスが海の神であることから、江戸時代から両者を同一視する説が出てきたためです。
個人的には、漁業と関連付けられる神はたくさんいるのに対して、舟で海からやってくる神は珍しい(少彦名命くらい)ため、エビス=ヒルコ説を支持します。
「エビス」と「ヒルコ」を同一視する信仰や神社はたくさんあるため、日都ヶ島で「エビス様」が信仰される可能性もあったと考えると面白いですね。
「エビス様とは、島の北部に建つ日都神社の愛称である」←平和そう。事件起きなさそう。
※アイキャッチの背景画像は筆者が山陽地方で撮影した写真を使用し、AI(Gemini)で文字入れ等のデザインを行っています。


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